2026-03-27

放射光と中性子観測を用いてゴム材料の階層構造と時間変化を設計対象とする枠組みが導入され、タイヤ性能のトレードオフの扱い方が構造制御の問題として再整理。

放射光と中性子でみるゴム

観測対象の拡張

従来のタイヤ材料設計は、配合と物性の相関を経験的に積み上げる構造にあった。評価は引張、摩耗、発熱などのマクロ指標が中心であり、内部構造はブラックボックスとして扱われることが多かった。

SPring-8の放射光とJ-PARCの中性子、計算機を組み合わせた解析により、観測対象が変わる。ナノ構造単体ではなく、階層構造の連関とその時間変化まで含めて扱う枠組み。

・ナノスケール:フィラー分散、ポリマー拘束層
・メソスケール:フィラーネットワーク、凝集構造
・マクロ応答:ヒステリシス、摩耗進展

個別の構造ではなく、連続した構造として扱う。

 

トレードオフの扱い

同時最適化の条件

低燃費、グリップ、耐摩耗は従来トレードオフ関係として整理されてきた。特にヒステリシス低減と摩耗耐性は相反する方向に働く。

今回の結果では、耐摩耗性能を約2倍に引き上げつつ、他性能を維持する設計が示されている。変化は材料の種類ではなく、構造制御の粒度にある。

・従来
 配合比率 → 分散状態は結果
 性能調整 → トレードオフ内で最適点探索

・今回
 構造状態 → 設計変数として扱う
 性能調整 → トレードオフの形状自体を変形

トレードオフが消えるのではなく、制御可能な範囲が広がる。

 

時間を含めた構造設計

動的状態の扱い

ADVANCED 4D NANO DESIGNは、空間構造に加えて時間変化を扱う設計枠組み。静的な構造ではなく、変形や発熱に伴う変化を対象にする。

ゴム内部では以下が時間依存で変化する。

・フィラー間距離とネットワーク再構成
・ポリマー鎖の拘束と解放
・界面でのエネルギー散逸

単一状態ではなく、状態の遷移を含めて設計対象になる。

観測と計算の対応関係も整理されている。

・放射光:高分解能での構造把握
・中性子:内部挙動の可視化
・シミュレーション:時間発展の補完

実験と計算を往復させることで、構造と応答の関係を追跡する。